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≪≪ 歩いて泣いて踊って飲んで、歩いてまた歩く | 5年前の今日 ≫≫




■ 経緯

2012年12月:ひどい腹痛と呼吸困難で総合病院の救急外来へ。入院。左卵巣が破裂していると言われる。転院。余命1ヶ月未満と診断される。破裂した卵巣の摘出手術後、左卵巣がん(類内膜腺がん)3c期と告知される。抗がん剤治療開始。

2013年01月:ヅラをかぶる。
2013年02月:「ヅラが飛びそうな強風のため」という理由で休もうとするも会社のボスに却下される。
2013年05月:抗がん剤治療終了。
2013年07月:子宮、右卵巣、リンパ節などの摘出手術。
2013年08月:再び抗がん剤治療開始。術後腹壁瘢痕ヘルニアの予兆。
2013年10月:抗がん剤治療終了。月1回の通院で経過観察へ。術後腹壁瘢痕ヘルニアと診断される。

2014年02月:術後腹壁瘢痕ヘルニア手術。
2014年04月:CTの結果を経て、すべての治療終了。
2014年10月:抗がん剤治療終了から1年経過し、通院が2ヶ月に1回となる。ヅラを脱ぐ。
2014年11月:健康診断で人生最重量を記録する。

[ 入院13日目 ] 狭い幅にビビる

2017/10/31 | trackback [ 0 ] | comment [ 6 ] | がん告知まで


手術室に向かうエレベーターがきた。
母は病棟にある家族控室に残るというので、看護師の佐々木さんと福田さんと三人でエレベーターに乗りこむ。
エレベーターの外に向かってあたしが「じゃあね」と言うと、母は手を振りながら顔をクシャクシャにして泣いた。
いちいち泣きすぎです。
エレベーターの中で佐々木さんが、「病棟に戻ったらお母さんに声かけてみますから」と言ってくれたけれど、「たぶんキリがないのでほっといていいです。ああ見えて、頼る人がいなければわりと一人でなんでもできるので」と言うと、福田さんが「シビアですねー」と言ったので、なんとなく3人で笑った。

エレベーターを降りると、手術室に続く廊下は病棟より暗くて静かだった。
天井に視線を移すと、照明器具には3本入るべき蛍光管が2本しかついていない。
節電かー。
東日本大震災から1年8ヶ月経っていたけれど、患者がひとりで歩かない場所に限っては、蛍光管を外したり、まめに照明を消したりして節電しているのだと、佐々木さんが教えてくれた。
組織のこういう取り組み、大好きだ。
いい病院だなあ。

手術室の前に着くと、ドアには、街のいたるところで見かける〝押して下さい〟と書かれたタッチ式自動ドアスイッチがあった。
えーーー、あれじゃないのーーー?
ほら、よく医療ドラマで見る、つま先でトンとして開ける自動ドア。
あれが見たかったなー。
できれば、つま先でトンってやってみたかったなー。
…と、どうでもいいところに不満を抱きつつ看護師さんが開けた自動ドアを抜けると、広いとは言えないスペースに看護師と麻酔医が十数名いて、〝コードブルーみたい!〟とテンションが上がった。
が、看護師の佐々木さんと福田さんが手術室の看護師への引き渡しを終え、「終わったら病棟の看護師が迎えに来ますからね」と言って出ていくと、途端に心細くなった。
手術室の看護師さんに連れられてさらに奥へ進むと、細長い台の周りで男女5人が待ち受けていた。
あたりの設備を見て、どうやらここで手術するらしいことがわかった。



知らない人ばかりでなんか緊張するー。
あれ。慣れない場所で、大勢の知らない人に囲まれた時に落ち着く方法、むかしなにかで読んだな。
なんだっけ。古いマンガだった気がするけど……。



記憶の糸を手繰り寄せながらぼんやりしていたけれど、「じゃあここに乗ってください」という麻酔科医の声で我に返った。
え?ここに?乗れ…と…?
いや、目の前にある、やたら幅の狭い台に乗ってと言われているのは分かるんだ。
だけど、こんな狭い場所に乗るって何。
乗って何すんの。(麻酔です。そして手術です)
台の長さから、乗っての次は寝ろと言われそうな気はするし、おそらくこれが手術台なのだろうけれど、こんな狭い幅のとこに寝たって安定しないでしょう。
理解できないことだらけだが、とりあえず、狭い台の横にあるステップに上がり台に座ってみた。
「じゃあ上に着てるもの脱いでください」
下着はつけないよう言われていたから1枚脱いだらポロリだけど、不思議と恥ずかしさはない。
あたしが胸をはだけるのと同時に、年配の女性麻酔科医がタオルで胸を隠してくれ、別の、明らかに年下の女性麻酔科医が、点滴のラインが袖に引っかからないよう、脱ぐのを手伝ってくれた。
そして、「それじゃ、ゆっくり仰向けになってください」と言う。
こんな狭い幅のところに仰向けになれ…だと…?
横から見ている時は身体の幅ギリギリくらいに見えたそこは、上から見てみると、思ってたより少しは広い。けどヨガマットくらいじゃないの?この幅。
次から次へと浮かぶ疑問を口にすることもできないまま、恐る恐る仰向けになると、身体は余裕でその幅におさまった。
けれど、緊張で身体はガチガチだった。
ほんの少し動いただけで、ベッドから落ちる夢を見る時の、あの〝グラッ!〟という感覚に襲われそうな狭さでリラックスできるわけがない。
思いがけない自分の緊張ぶりに自分で驚いてしまい、黙っていられなくなって年配の女性麻酔科医に向かって言ってみた。

「この狭さ、落ちそうで緊張するんですが、みんな平気なんでしょうか」

すると、年配の女性麻酔科医が目尻を下げて笑いながら訊いてきた。

「手術とか麻酔とかじゃなくて狭くて緊張してるの?」
「たぶん。この、勢いよく寝返りをうったら100パー転げ落ちるみたいな狭さがもう、なんというか、もう」
「じゃあ転げ落ちないように気をつけながら横向きになってみましょう」
「え?」
「大丈夫。落ちないように支えますから」

ちなみにあたしは、狭所恐怖症とか閉所恐怖症ではないし、高所恐怖症でもない。
だけどたとえるなら、高層ビルの屋上の縁に寝ろと言われているようなゾワゾワ感がおさまらない。
「はい、左側を向きますよー」と言われて恐る恐る右肩を台から離すと、ベッドから落ちる夢を見る時のような〝グラッ〟がくる気がして、すぐに右肩を台に戻した。

「どうしました?」
「ふっ…」
「え?」
「ふふふっ」

自分のビビリ具合がおかしくて吹きだしてしまい、いったん笑い始めると止まらなくなった。
ちなみに普段のあたしは、笑い上戸でもない。
怖がっていると思ったら急に笑い出す、精神面に問題ありそうなあたしに、それでも年配の女性麻酔科医は困った顔をすることなく言った。

「じゃあ少しお喋りしましょうか」
「すみません。ふざけてるわけじゃなくて」
「うんうん。何か不安なことがあるのよね?」
「不安というか疑問が…」

幅の狭い台が怖かったのは、その上で眠ることを想像していたからだ。
初めての全身麻酔は、痛みを感じずただ眠っているというイメージで、だったら寝返りうつだろ、寝返りうったら落ちるだろ、と考えてビビっていた。
それを口にすると年配の女性麻酔科医は、笑い飛ばすことなく教えてくれた。

「普通の睡眠とは違って、もっと深く眠っているから寝返りうったりはしないの。万が一動くようなことがあっても、すぐに麻酔でコントロールするし、そんな時のために身体を固定もするの。だから安心して」
「ベッドから落ちる夢を見た時みたいに、〝グラッ!〟ともなりませんか?」
「ならないならない」

「へー」と納得したふりをしてみたが、寝返りもうたず夢も見ずに深く眠る自分がイメージできなさすぎて、どうにも解せない。
ただ、しょーもない躊躇でその場にいるみんなに迷惑をかけていることがいたたまれず、意を決して「横を向きます!」と宣言し、二人の麻酔科医の手を借りてなんとか真横を向いた。

「膝を折り曲げて抱えるようにできるかな」
「はい!」
「おへそを見るようにしてもうちょっと背中を丸くしてみて」
「はい!」

元気よく返事をしていると徐々に怖さが遠のきはじめた。

硬膜外麻酔のカテーテルを入れる前に、背中に局所麻酔をするという。
「ちょっと痛いかもしれないけどすぐに済むから動かないで我慢してね」
背中に注射するのも初めての経験だけど、普通の注射針の痛みには滅法強い。
実際、チクっとはしたが、痛いというほどでは全くなかった。
針を刺すのにも上手い下手はあるのだろうけれど、だとすればあたしは、上手い人ばかりに出会っているのかもしれないなあ。
そんなことを思っているうちにまた、古いマンガで読んだ、〝慣れない場所で、大勢の知らない人に囲まれた時に落ち着く方法〟が何だったのか?を思い出したくて仕方なくなった。

そうだ、ピアノだ。ピアノの発表会だ。
大事な発表会であがってしまって、気持ちを落ち着けるために…ために…あ!思い出した!
落ち着く方法は、〝大勢の中から知ってる人を見つける〟んだ!
『いつもポケットにショパン』に書いてあったんだ!


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「季晋ちゃんがタイプ」と思っていた可愛い時代もありました。



それを思い出したところで、手術室に知ってる人はいない。
けれど、懐かしいマンガの印象的なシーンを思い出せたことで、なんとか気持ちが落ち着いた。

局所麻酔が効いたところで、硬膜外麻酔のカテーテルの挿入が始まった。
背中で見えないぶん、麻酔科医が、いま何をしているのかを話してくれるから怖さはなかった。
挿入時、違和感はあるけれど痛みはなく、「はい、ちゃんと入りましたよー」という麻酔科医の声に安堵していると、カテーテルの挿入箇所をテープで留められた。



「じゃあ麻酔始めますね」
「はい」
「そうだ。訊きたかったことがあったの。坂口先生から、『MYKさんにはくれぐれも音楽聴かせないで』って言われたんだけど、どうして?



さーかーぐーちーーーー。



頭の中でブチ切れたところで意識が途切れた。
瞬殺だった。



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関連記事



≪≪ 歩いて泣いて踊って飲んで、歩いてまた歩く | 5年前の今日 ≫≫




■ 経緯

2012年12月:ひどい腹痛と呼吸困難で総合病院の救急外来へ。入院。左卵巣が破裂していると言われる。転院。余命1ヶ月未満と診断される。破裂した卵巣の摘出手術後、左卵巣がん(類内膜腺がん)3c期と告知される。抗がん剤治療開始。

2013年01月:ヅラをかぶる。
2013年02月:「ヅラが飛びそうな強風のため」という理由で休もうとするも会社のボスに却下される。
2013年05月:抗がん剤治療終了。
2013年07月:子宮、右卵巣、リンパ節などの摘出手術。
2013年08月:再び抗がん剤治療開始。術後腹壁瘢痕ヘルニアの予兆。
2013年10月:抗がん剤治療終了。月1回の通院で経過観察へ。術後腹壁瘢痕ヘルニアと診断される。

2014年02月:術後腹壁瘢痕ヘルニア手術。
2014年04月:CTの結果を経て、すべての治療終了。
2014年10月:抗がん剤治療終了から1年経過し、通院が2ヶ月に1回となる。ヅラを脱ぐ。
2014年11月:健康診断で人生最重量を記録する。

comment

待ってました! : あ
更新待ってました\( ˆoˆ )/いつもちょいちょい開いてましたが10月31日に4回くらい開いちゃいました!滑り込みすぎる(笑)またの更新お待ちしてます!
2017/11/01 Wed 00:09 URL
: かなめ
ふふふっ♪
どうなることかと思ってましたら、しれっと10月中の更新にすべりこみましたね(笑)
2017/11/01 Wed 00:39 URL
: rumi
ふふふっ。
更新 待ってましたー☆

私も病院のベットの幅が狭過ぎて、閉所恐怖症みたいになって、パニック起こしそうになった事思い出しました。

坂口先生、さすがです。
2017/11/01 Wed 12:40 URL
: ポテチ
更新ありがとうございます。

いよいよ、手術のお話ですね。
何故か私も緊張しながら読んでいたのですが、MYKさんの緊張のツボがずれていたので面白かったです。

それにしても、坂口先生さすがですね(笑)
きっとぶちギレた瞬間に緊張も吹き飛んで手術出来たことでしょう。

まだまだ闘病の序盤ですね。今後もMYKさんを応援しています。よろしくお願いします。
2017/11/01 Wed 18:10 URL
: YUZU
予告通りの、月内 更新
ありがとうございます。

いよいよ、手術!!
(ここに、たどり着くまで、長かった(笑))

本当に、MYKさんの文章表現は、小説ですね!

私も、3年前(12月)の手術の事を思い出しながら、そうそうと頷きながら読みました。

私は、寝落ちするの早すぎて、主治医の先生が来られたのも記憶に有りません。
本当に、深い…深い…眠り。
(まぁ、深い眠りでなと大変ですよね)
前にも、コメントしましたが、出来ることなら、自分の手術のビデオ見たい! 変態です!
続きが、早く読みたい~(>_<)
更新
よろしくお願いします!
2017/11/01 Wed 20:41 URL
承認待ちコメント :
このコメントは管理者の承認待ちです
2017/11/16 Thu 16:31

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